子宮や卵巣、睾丸など生殖に関わる臓器は漢方・中医学ではどのようにとらえられているのでしょうか。
漢方・中医学でいう「腎」とは、西洋医学の「腎臓」よりも広い働きを意味します。
- 腎のはたらき
- 精を蔵する
- 生長・発育・生殖を主る
- 水を主る
- 納気を主る
「精」とは人体の生長・発育・生殖や各臓器の生理機能を行うのに必要不可欠なものです。精が不足してくると、生殖機能が低下したり、老化が早まったりします。また、成長期の不足は発育が遅れたりする場合もあります。
精には生まれたとき両親から受け継いだ「先天の精」、出生後は両親から供給されることがなくなるため食べ物から作られ補充される「後天の精」があります。
そして精からは「腎陰(カラダの潤し、冷やす力)」・「腎陽(カラダを温める力)」が作り出されカラダの陰陽のバランスを調整しています。
「生長・発育・生殖を主る」ということは、まさに「腎」の衰えや力不足が生殖能力の減退や老化に深く関わっているということです。
「水を主る」とはカラダの水分調節、「納気を主る」とは呼吸を促す働きとも関わりが深いことを意味します。
腎の生理機能が低下した状態を「腎虚」と言い、足腰がだるい・白髪・脱毛・免疫力低下・耳鳴り・めまい・忘れっぽい、精力減退という症状は、「腎」の力と密接な関係があります。「老化=腎虚」と捉えると分かりやすいと思います。
「補腎」とは言葉の通り、「腎」の足りない部分を補うことです。不足によって低下した生殖機能を高めることができます。
ただし、「腎」のどの部分が不足しているか見極めるには、漢方・中医学の診断法が不可欠です。体質により次のように分類されます。
- 腎陰虚 腎陰(潤い)が不足し身体を冷却する力の低下
- 腎陽虚 身体を温める力やエネルギーの不足
- 陰陽両虚 潤い・温める力の両方が低下している状態
- 腎精不足 生殖器を働かせるための原動力や材料の低下
「補腎」するための漢方薬は
- 腎陰を増やすもの
- 腎陽を増やすもの
- 腎精を増やすもの
この3つに大別されます。
保健適応の補腎薬は「六味地黄丸」や「八味地黄丸」が有名ですが、いずれも植物性の生薬のみで構成されているため、効果は穏やかです。
効果を高めるには、体質を考慮しながら作用の強い動物性の生薬(鹿の角・亀板・胎盤エキス・蟻・牡蠣など)を用いるのと良いのですが、保健は適用されません。
食養生の観点では、一般的に色の黒いもの(ひじき・黒ゴマ・黒豆など)が「腎」の力を高めるのに良いとされています。積極的に食事に取り入れるとよいでしょう。