梅雨が明けると、毎日厳しい暑さが続きます。熱中症や脱水症状には注意しなければなりません。
人間や馬など、長距離を走ることができる一部の動物には、体温の上昇から身を守るために皮膚から汗をかく機能が備わっています。
しかし、自律神経の乱れなどからくる異常な発汗は身体にとって必要な水分、体力を消耗させてしまうため、最小限にとどめたいものです。
漢方・中医学では、脳の働きは五臓の「心」の働きと最も関係が深いとされます。
イライラしたり緊張したりすると顔が赤くなるのは、「心」の経絡に過剰な熱がこもるためです。
脳がその熱を感知すると、身体を冷やそうと汗をかき始めます。
つまり、身体のどこかのバランスが乱れて熱を持ち、「心」に熱が伝わると発汗するわけです。
汗をかきやすい体質はおもに、
気虚、陰虚、湿熱タイプの3つです。
気虚タイプ
慢性病を長くわずらっている方、虚弱体質、急激な体力の消耗した時によく見られ、じっとりした汗や寝汗をかくタイプです。
これは身体の正気(エネルギー)が不足しているために、毛穴のコントロールができず、必要な水分が汗として漏れてしまっている状態です。
また、毛穴から病原が体内に侵入しやすくなり、体調を崩しやすくなります。
このときは脾胃(消化器)や皮膚の働きを高め、食べ物から気(エネルギー)を作る力を高めます。
代表的処方は補中益気湯や衛益顆粒です。
陰虚タイプ
陰虚の発汗は起きている間はあまり汗をかかないが、異常に寝汗をかくタイプ。
痩せている方、慢性病の方、高齢者に多い体質の一つです。
「陰虚」とは身体の潤いの不足を意味します。「陰」には冷却水のような働きがあり、夜に働きが活発になります。
体内で余分な熱を充分に下げることができないときは、汗と一緒に熱を体外に追い出そうとするため、過度の寝汗となるわけです。
このタイプは汗によってさらに陰を消耗するため、悪循環に陥りやすく、悪化すると血を消耗し、不眠や動悸など症状が現れることがあるので早めの対策が必要です。
杞菊地黄丸や瀉火補腎丸、麦味参顆粒などで潤いを保持する力高める必要がありますが、睡眠に影響が出ているときは、酸棗仁湯や帰脾湯を併用します。
湿熱タイプ
湿熱性の発汗は食生活の乱れなどが原因で起こることが多くなります。
酒・油・肉・生もの・甘いもの・辛いものなどの過食は脾胃(胃腸系)の働きを弱らせ、消化吸収しきれない食物は余分な水分と毒を発生させ、やがて熱を持ち、熱は体の上部や表面に移行する性質があるため、頭や手足の毛穴を開き発汗させます。
特に午後や夕方に発汗が多くみられます。便通が悪かったり腸内環境が悪いと、汗と一緒に皮膚から毒素が排出されることもあるため、水泡や発疹などが現れることもあります。
慢性皮膚病の方は、夕方から夜にかけて痒みが悪化するのはこのためです。
正常な人でも皮膚の薄いすねなどに痒みが生じることがあります。
湿熱を取り除く瀉火利湿顆粒をベースに便通や胃腸をととのえる処方がおすすめです。
止汗作用のある漢方によく配合される牡蠣殻などには、ストレスによる脳の興奮を抑える働きがあるカルシウム等のミネラル類が多く含まれています。
ミネラル類は汗とともに排出される量が多くなるので、夏にカルシウムや海藻類は積極的に摂ると良いでしょう。
酸味のある食材には、毛穴をコントロールする力を高めたり、自律神経のバランスを整えるものが数多くあります。
一日の自律神経のサイクルを整えるため、起床後、朝日をしっかりと浴び、朝食を摂ることで身体の体内時計をリセットするように心がけましょう。