67東洋医学における独特の診断方法、特に舌診についてご紹介いたします。

漢方は病気を治すのではなく、病人をなおす医学といわれています。
もし、体に異変があれば、患部だけではなく、体全体のバランスの乱れから生じたものと判断し、その乱れの原因を解明するために、さまざまな角度から体のデータを収集し、それを元に、適切な治療方法を導きだします。そのため漢方治療は、症状が改善されるだけでなく、体全体の調子がよくなるのが特徴です。

その診断方法には、望診(目による観察法、顔色、舌の様子など)、切診(触覚による観察法)、聞診(耳や鼻による観察法、声や臭いなど)、問診(質問をする)と、4つの観察法があり、その中でも特に、舌診が大切にされています。舌の色、形、表面につく苔の状態を詳しく観察し、そこから、体質の強弱や、病気の進行具合などを推測します。

正常な舌は、色はやや明るいピンクにうっすらと白い苔があります。寒い季節に、ぜひ気をつけたいていただきたいのは、舌の色が紫がかっている時です。暗い赤紫とか、淡白な赤紫の感じです。寒いと、血管は体温を逃すまいと縮んで、狭くなり、血流がわるくなります。普段から動脈硬化、高血圧、糖尿病、ストレスなどのある方は益々悪化し、それが舌に現れます。舌をひっくり返し、裏に走っている2本の静脈をみると太く、紫色に腫れている事もあります。

漢方では、『未病先防』という言葉があり、体の異変のシグナルをキャッチしたら、すぐ元に戻し、病気を未然に防ぐという意味です。人が健康に生きるには、体のあらゆる組織に、途絶える事なくイキイキと血液が流れていることが大切です。

中国では以前、心臓病患者が増え、主要研究機関が参加する国家プロジェクトが実施される中、最も治療効果がよく副作用が少ないと評価されたものに、冠心Ⅱ号方という処方があります。狭心症や脳梗塞の特効薬として確固たる地位を占めており、日本でも、それを大衆向けに改良され、厚労省の承認を受けたものに『冠元顆粒』という漢方薬があります。その中の主成分、丹参には、心臓、脳の微小血管や抹消血管を広げ、血流をよくする働きがあることが分かり、脳梗塞、痴呆症、心筋梗塞の治療予防薬として注目され、中国ではよく使われる血行改善薬の一つです。

中年を過ぎると、ほとんどの方に、よどみが発生しやすくなり、60歳を過ぎると、小さな脳血栓の危険性も高くなります。ぜひ、舌や舌下静脈の様子を見て、健康をチェックして下さい。もし、おかしいと気づいたときは、早めの予防治療で、大切な健康を守りましょう。

2010年02月24日 掲載

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