熟睡して脳が十分やすむ事ができないと、次の日眠気がさしたり思考力がにぶくなったり、体力不足から夏バテしやすいなど元気な一日を過ごすことができません。毎日、暑くて寝苦しい日が続きますがそのため熟睡できず、寝不足にお悩みの方が増えています。夜、眠りたいのに眠れないというのは本当につらいものです。
中国漢方(中医学)では不眠の原因は体のバランスの乱れからくる一つの症状ととらえています。不眠という体の症状から体全体のバランスの乱れの原因を探り、整えるのでその結果、不眠の症状の改善というだけでなく体全体の調子が良くなって、未病先防(病気になる前に、体の症状のバランスを整えて改善し、病気を防ぐ事)にもつながるという優れた点があります。また心と体は一体と考え、「心」を精神の「神」がやどる臓器ととらえ、不眠は精神の安定を図ることが最も大切と考えています。
不眠の原因は様々です。例えば暑い夜は体がほてり寝汗をかきます。もし体の陰(体液のような体を潤しほてりを鎮めるもの)の力が弱い方が、体がほてり寝つきが悪くなかなか眠れないという時は、体を潤し、精神を安定させる事が大切です。腎は水分をコントロールする働きがあり、腎の陰液を補う事でほてりを鎮めます。さらに興奮し不安定になっている心に栄養を与れば心神が安定し、やすらかな睡眠を手に入れる事ができます。
そのような症状を改善する代表的な漢方薬は、天王補心丹(てんのうほしんたん)です。おすすめの食べ物は、ぶどう、きくらげ、イカや牛乳などです。
お酒や水分の摂りすぎ、食べすぎなどでも胃腸の調子が悪くなり眠れなくなる事があります。脾胃(消化器官)に負担がかかり消化吸収の力が弱くなると、体内に余分な水分が多くたまり、病的な水分(痰)が熱となりそれが心神を不安定にして眠りを妨げてしまいます。そのため消化器官(脾胃)を大切にし、食生活を見直さなければなりません。
そのような症状を改善させる代表的な漢方薬は、温胆湯(うんたんとう)です。おすすめの食べ物は大根、とうがん、海草などです。
また血色が悪く、からだが疲れやすく食欲がない時にも、寝つきが悪くなります。日ごろのストレスや考えすぎなどで心と脾胃の力が弱まり、心神が不安定になっています。眠いのになかなか眠れないとかだるい、不安感、動悸や食欲低下の症状もみられます。まず脾胃の力を強めて、気血の産生をうながし、心血の栄養を補って心神を安定させることが必要です。心血を補い、脾胃の力を高め、寝つきを良くする代表的な漢方薬は、帰脾湯(きひとう)です。おすすめの食べ物には、ナツメ、人参、はすの実、等があります。
熟睡できないときは横になっているだけでも体は重力から開放され休めますので、心配しすぎないでください。
入浴は体がほてらないよう寝る直前ではなく、なるべく余裕をもって早めに済ませるようにしましょう。