妊娠しにくい原因として、体重があげられます。体重(BMI)は多すぎてもダメですし、逆に低すぎてもよくありません。
どのくらいが良いかというとBMI値で19~25の範囲内におさめるのが良いでしょう。カラダにとって必要なホルモンの多くは、脂質(コレステロール)やタンパク質から作られます。低体重の方は、ホルモンを作る材料が不足しがちな傾向にあるためです。
急激なダイエットをして体重を落としたり、逆に急に太ったりすると、ホルモンバランスが乱れ、妊娠しにくくなることがあるので注意が必要です。
食べても太らない、食べれないために低体重の方はいます。たまにテレビでも大食いの方が出ていますが、そういう人に限って太ってはいません。このような体質の人と、漢方・中医学の五臓の「脾」のはたらきは深い関わりがあります。
最近はよく、ダイエットに関する情報はあふれていますが、太るための方法は、あまり話題にされませんね。以前、肥満に関する研究の第一人者である新潟大学名誉教授の岡田 正彦先生のお話を聞く機会がありました。(「人はなぜ太るのか―肥満を科学する」などの著書があります。)そこで興味深い質問が出たんですね。
「痩せている人を太らせるにはどうしたらよいですか?」という質問です。
現代医学では非常に難しいというのが答えでした。
脂肪はエネルギーの貯金です。食が豊かになったのはごくごく最近の話。それまでは長い間飢餓の時代が続いていました。太るというのはそういった飢餓状態を生き抜くためのエネルギーを貯蓄しておく手段だったんですね。
ですから、本来は必要以上のエネルギーは身体は貯蓄しようとするのが普通です。太れないというのは、なんらかの原因でこの機能が働かないということです。
華奢で弱々しい人を「脾弱(ひよわ)」と言ったりしますね。漢方・中医学では次のような働きの総称を「脾」と呼びます。
- 飲食物を消化吸収して全身に運ぶ
- 「血」の流出を防ぐ
- 臓器や器官の位置を維持する
つまり、「脾」が弱いと
- 食べ物からうまく血液や生きるためのエネルギーを作り出せない
- 出血しやすい(青あざ・不正出血)
- 胃下垂・子宮脱・脱肛
このようなことが起こりやすくなります。もちろん、 消化器系の問題なので、食欲不振や下痢なども起こります。
「脾」の働きが正常ではないと、なかなかこのような症状は改善しません。
低体重の方は「脾」の働きが弱っていると言えます。そのため、食欲があまりない、食べても消化吸収してうまく栄養をとり込めないということが起こるわけです。ただ食べる量を増やすだけでは、ますます「脾」の働きを弱めてしまうため、脾の働きをたすける「健脾」作用のある処方を使うと良いと思います。
代表的な処方は「補中益気湯」「参苓白朮散」。「四君子湯」をベースに使った処方もオススメです。
慢性的に「脾」が弱い状態にある場合は、薬の成分もうまく吸収できないため、改善に時間がかかりますが、続けていると次第に胃腸の調子がよくなり、食べれるようになってきます。
体重を増やさなければならないと思って、無理に食べても胃腸(脾)の負担になるばかりであまり良いことはありません。食べる量はあくまでも腹八分目。「脾」の調子が良くなり、食物を消化吸収してうまく栄養を利用するチカラが高まれば、自然に体重も増えてきます。