加味逍遥散(かみしょうようさん)は、イライラしたり落ち込んだり、なんだかいつも不安感を感じる、こんな時によく使われる漢方薬です。病院の保険診療でも処方することができるため、比較的ポピュラーな漢方薬ですね。とくに、更年期障害や月経前症候群(PMS)、自律神経のトラブルで服用される方が多いです。
難しい感じが使われている処方ですが、「逍遥(しょうよう)」とは思い気のまま自由にフルフラ散歩するという意味で、リラックスするというイメージです。
「加味逍遥散」の類似処方に「逍遥丸(しょうようがん)」がありますが、記載される効能効果はほぼ同じ。(逍遥散は顆粒、逍遥丸は丸薬の違いです。)
逍遥丸をお使いの方の中に、
「加味逍遥散じゃダメですか?」
「冷え性に聞くと聞いたんですが?」という質問もよくされますのでご説明します。
目次
加味逍遥散は逍遥丸+2生薬が加わった漢方薬
逍遥丸は加味逍遥散のベースの処方です。逍遥丸に2つの生薬が加わえられたものが加味逍遥散。
- 芍薬(シャクヤク)
- 甘草(カンゾウ)
- 当帰(トウキ)
- 柴胡(サイコ)
- 白朮(ビャクジュツ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 薄荷(ハッカ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 甘草(カンゾウ)
- 当帰(トウキ)
- 柴胡(サイコ)
- 白朮(ビャクジュツ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 薄荷(ハッカ)
+
- 牡丹皮(ボタンピ)
- 山梔子(サンシシ)
加味逍遥散のベースは逍遥丸と同じですが、ボタンピとサンシシという二つの生薬が加わります。このため、加味逍遥散は牡丹皮(ボタンピ)の「丹」、山梔子(サンシシ)の「梔」をとり、丹梔逍遥散(たんししょうようさん)とも呼ばれます。
加味逍遥散と逍遥丸の効能効果
加味逍遥散
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症: 冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症
逍遥丸
体力中等度以下で、肩がこり、疲れやすく精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症: 冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症
効能効果はほとんど同じですが、ポイントは加味逍遥散の「のぼせ感があり」 という箇所です。のぼせに対応させるには、単純に冷やす必要があります。
逍遥丸にボタンピとサンシシという2つの生薬が加わえられたものが加味逍遥散。
ベースとなる逍遥丸の働きは、漢方・中医学的には「肝気欝滞・養血健脾」というものです。「五臓の肝の気の流れが停滞している」、「消化器系がうまく働かず血やエネルギーを作り出せない」といった状態に使います。症状では、イライラしやすい、なぜか気分が落ち込む、睡眠障害、ストレス等の影響を受けやすくいつまでもクヨクヨ思い悩んでしまうといったもの。このような感じです。
逍遥丸はストレスなどから肝(自律神経系やホルモンバランス)が乱れないように守りたいといった時に使えます。ストレスなどで自立神経やホルモンバランスが乱れると、じつ様々な症状が現れますので、逍遥散(逍遥丸)は意外と幅広く使うことが可能です。
加味逍遥散は、上記の逍遥散に熱を冷ます作用をもつ生薬、ボタンピとサンシシが加わったものです。熱を冷ます生薬は体を冷やすので、冷え性には向かない処方と言えます。
漢方・中医学的には加味逍遥散の効能は「肝気欝滞・養血健脾 + 清熱瀉肝」となります。清熱瀉肝は肝にたまった熱を取り除くというものですが、「高ぶった交感神経を抑える」と考えていただければわかりやすいかと。
冷え性にも色々な原因があるので、加味逍遥散も冷え性に使用するケースがあるのですが、加味逍遥散に「冷え性」の効能があるから。。。という感覚で使ってしまうと、あまり効果はえられません。
加味逍遥散に含まれる山梔子(サンシシ)の使用上の注意
近年になって、山梔子(サンシシ)含有の漢方薬に厚生労働省より注意喚起が追記されました。
それは、腸間膜静脈硬化症。長期服用により腸間膜の静脈が石灰化して血流が悪くなるといったものです。症状としては、腹痛や下痢、便秘、お腹の膨満感などが現れますのでご注意ください。
漢方・中医学では漢方薬は「証」にあっているかで用いるべきかどうかを判断します。漢方・中医学の使用上の注意として、もともと
苦寒で脾腸を損傷しやすく、緩瀉の効能を持つので、脾虚の下痢傾向のものには用いない。[注意臨床のための中薬学 神戸中医学研究会 編著]
といった記載があります。
体を冷やし、胃腸の負担になりやすい。軽い下剤のような働きがあるので、胃腸系統が弱い人に使ってはダメですよ。といった意味合いです(^^;
逍遥散(逍遥丸)はサンシシも含まれてないので長期服用でもより安心です。
どう使い分けるの?
加味逍遥散と逍遥散(逍遥丸)、共通して言えるのは「肝の気の流れが悪いとき」に使います。違いは熱があるかどうか。
加味逍遥散は清熱作用(カラダの熱を除く)を持ちます。女性の更年期障害などに多い、何もしてないのに急に暑くなって汗が吹き出るようなホットフラッシュやのぼせ感が強い場合は加味逍遥散がオススメです。
漢方・中医学でいうのぼせやホットフラッシュの原因の多くに、「陰虚」という体の潤い不足があります。カラダの冷却水が不足したために余計な熱が生まれてしまい、これがのぼせやホットフラッシュを引き起こしている状態です。加味逍遥散は根本の「潤い不足」を改善しません。
カラダの潤いを補うには「補陰」という方法が必要です。
この場合は、
に切り替えた方が良いと思います。
症状も調子が良いとき、悪い時と波があります。
酷い時は加味逍遥散
といった使い方がオススメです。
追記:逍遥丸(しょうようがん)が廃盤、逍遥顆粒へリニューアルします
逍遥丸が廃盤になることなってしまいました。
剤型が丸剤から顆粒に代わり『逍遥顆粒』としてリニューアルするそうです。
逍遥丸は、生薬から抽出したエキスをトウモロコシのデンプンやハチミツなどで練り合わせ丸めた丸剤という剤型です。服用する量は12丸を1日3回と、初めて服用する方は少し驚いてしまうような量です。
こんな服用量なので、「飲むのが大変」と言ったお声も多いです(^^;)
そのせいか体調が回復しても、もともと職場や学校などでストレスが多いせいか、イライラしやすい、落ち込みやすいといった方には、
量を半分くらいにして飲んでも体調維持できてます!
普段は半分くらいですが、ストレス感じた時だけしっかり飲んでます!
という方も結構いるような印象ですね。。
丸剤は、生薬の味や香りが苦手な人でも抵抗なく服用しやすいということと、お子さんなどに服用させる場合、量を調節しやすいという特徴があります。(※逍遥丸の服用は15歳以上からです)
服用量は多いですが、なんだかんだ評判良かった逍遥丸は、今回、一時廃盤になってしまいました。
というのも、メーカー(イスクラ産業)の方でも安定供給がなかなか難しいらしく、頻繁に出荷規制がかかったりしていたのですが。さすがに頻繁に供給が止まるので、安定供給可能な顆粒剤へ切り替えるとのことです。一時というのも、安定供給のめどが立たないとのことで、いつ再開できるようになるかは不明とのことです。
新商品、逍遥顆粒
用法・用量
成人(15歳以上) 1回1包 15歳未満7歳以上 1回2/3包 7歳未満4歳以上 1回1/2包 4歳未満2歳以上 1回1/3包 2歳未満 1回1/4包 1日3回、食間又は空腹時に服用してください。
これにより、思春期の月経不順、学校生活や試験・受験期のストレスによる精神神経症状にも使いやすくなりました。
顆粒なので、2/3、1/2包など取り分けるのは少し面倒ですが。
逍遥顆粒は少し大きめの顆粒です。そのまま口に入れるとザラザラした感じが気になるかもしれません。この場合はお湯に溶かして服用していただいて大丈夫です。
当店では丸剤の逍遥丸は半年程度の在庫は確保しておりますが、いずれ欠品となります。切り替え前に丸剤をお使いの方で、顆粒を試してみたいという場合は店頭でご案内しておりますので、お声がけください。