漢方・中医学の臓器は、現代医学と同じ名称です。
そのため、各臓器の働きも混同されることが多いのですが、漢方と現代医学(西洋医学)の臓器の働きは違います。
現代医学だと肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓
このように現代医学でも実在する臓器です。
もともと日本の中心医療は漢方でしたが、江戸時代に西洋医学が入り普及し始めました。
その際、それまであった漢方の解剖用語を、比較的それに近い西洋医学の臓器にに当てはめたため、同じ漢字となりました。
漢方の臓器は、現代の西洋医学の臓器の働きも含みますが、もっと幅広い機能を指します。
漢方用語は一般になじみのない用語が多いため分かりにくいのですが、簡潔にまとめると以下のようになります。
漢方・中医学の各臓器の働き
「肝」の働き
- 疏泄(そせつ)をつかさどる
- 血を蔵す
- 筋をつかさどる
- 目に開竅(かいきょう)する
関連する器官目、胆のう、筋、爪など
「肝」のバランスが乱れると現れやすい症状
情緒不安定、いらいら、ゆううつ、じん麻疹、黄疸、月経異常、貧血、頭痛、肩こり、めまい、筋肉のけいれん、こむら返り、目の不調など
「心」の働き
- 血脈をつかさどる
- 神志をつかさどる
- 舌に開竅(かいきょう)する
関連する器官小腸、舌、血管
「心」のバランスが乱れると現れやすい症状
動悸、不整脈、狭心症、心筋梗塞、不眠、夢をよくみる、口内炎、情緒不安定、いらいら、ゆううつなど
「脾」の働き
- 運化をつかさどる
- 統血をつかさどる
- 気血生化の源である
- 肌肉と四肢をつかさどり、口に開竅(かいきょう)する
関連する器官胃、口、唇、筋肉
「脾」のバランスが乱れると現れやすい症状
食欲減退、腹部膨満、下痢・軟便、便秘、体が痩せる、肥満、疲労倦怠、むくみ、おりものが多い、血便、血尿、不正出血、皮下出血、脱肛、子宮下垂など
「肺」の働き
- 気をつかさどる
- 水道を通調する
- 宣発と粛降をつかさどる
- 皮毛をつかさどる
- 鼻に開竅(かいきょう)し、咽喉に通じる
関連する器官大腸、皮膚、鼻、毛
「肺」のバランスが乱れると現れやすい症状
呼吸の異常、咳、のどの痛み、痰、鼻炎、鼻づまり、発汗異常(汗が多い、少ない)、風邪(感染症)にかかりやすい、下痢、便秘、肌荒れ、慢性湿疹など
「腎」の働き
- 精を蔵す
- 水をつかさどる
- 納気をつかさどる
- 骨をつかさどり、髄を生じ、脳を充す
- 耳と二陰に開竅(かいきょう)する
- 腰は腎の府である
関連する器官膀胱、耳、骨、髪
「腎」のバランスが乱れると現れやすい症状
子供の発育不良、早老現象、男女不妊、精力減退、頻尿、排尿痛、尿量減少、トイレが遠い、むくみ、喘息、耳鳴り、足腰がだるい、冷え、ほてりなど
各臓器のつながり
各臓器はそれぞれが連携し合いながら働いているため、一つの臓器のバランスが崩れると、他に影響して同時に複数の臓器のバランスが崩れることもあります。漢方薬を選択する上で、臓器がどのようなバランスにあるのかも考慮しながら、一人ひとりの異なる体質、発病の原因を分析することも大切です。