今回は配合生薬が全く同じ処方、

  • 「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」(イスクラ産業)
  • 「当帰養血精(とうきようけつせい)」(八ツ目製薬)
  • 「婦人宝(ふじんほう)」(小太郎漢方製薬)

の違いについてのお話しです。
当店でも、効能効果・配合生薬が全く同じの上記の処方を取り扱うにあたり、いろんな角度から比較検討したことがあります。結果、「婦宝当帰膠」しか取り扱っておりません。

ただ、「婦宝当帰膠と当帰養血精は同じですか?」、「婦宝当帰膠と婦人宝は同じですか?」というお問い合わせがとても多いと感じています。
結論から言うと、違います。同じではありません!

違うと言っても、味や風味、シロップのドロドロ具合などではありません。(実際、違いますが)

成分比較

婦宝当帰膠

¥9710/ 600ml
(300ml×2本)消費税別

【効能効果】
更年期障害による次の諸症:頭痛、肩こり、貧血、腰痛、めまい、腹痛、のぼせ、耳鳴り、冷え症、生理痛、生理不順

【成分】1日量8mL中
トウキ 5.52g
シャクヤク 0.36g
センキュウ 0.16g
オウギ 0.36g
ブクリョウ 0.36g
トウジン 0.36g
ジオウ 0.36g
カンゾウ 0.16g
アキョウ 0.36g

【添加物】
白糖、黒砂糖

当帰養血精

¥5,000/ 300ml
消費税別

【効能効果】
更年期障害による次の諸症:頭痛、肩こり、貧血、腰痛、腹痛、めまい、のぼせ、
耳鳴り、生理不順、生理痛、冷え症

【成分】1日量8mL中
トウキ 5.52g
シャクヤク 0.36g
センキュウ 0.16g
オウギ 0.36g
ブクリョウ 0.36g
トウジン 0.36g
ジオウ 0.36g
カンゾウ 0.16g
アキョウ 0.36g

【添加物】
白糖、安息香酸ナトリウム

婦人宝

¥5,000/ 300ml
(100ml×3本)消費税別

【効能効果】
更年期障害による次の疾患:
生理不順、生理痛、冷え性、貧血、腹痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴り

【成分】1日量8mL中
トウキ 5.52g
シャクヤク 0.36g
センキュウ 0.16g
オウギ 0.36g
ブクリョウ 0.36g
トウジン 0.36g
ジオウ 0.36g
カンゾウ 0.16g
アキョウ 0.36g

【添加物】
安息香酸ナトリウム、黒砂糖、白糖、パラオキシ安息香酸ブ チル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、香料、 エタノール、グリセリン、バニリン、エチルバニリン

「婦人宝」は日本製だから安心と言いますが、原材料の生薬は中国産です。
どのメーカーも日本で医薬品として販売する以上、日本の厚生労働省の許可承認を取得し、原料から製剤に至るまで、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)をクリアして製造されています。さらに、原材料は中国産ということもあり、残留農薬には別個に自主基準を作り管理しているところもあるので、安全性は大差ないように思います。

 このため、「内容は同じで違いは添加物や保存料が含有されているか」ということになりそうです。
しかし、実際は大きな違いがあります。

元の処方は中国の「当帰養血膏」

もともとは中国で考案されたもので、何百年も使用されてきた処方。処方名は「当帰養血膏」といい、中国では「阿帰養血糖漿」という商品名で流通しています。
この製品のトップメーカーは、400年以上の歴史を待つ「武漢中聯薬業集団股份有限公司(旧:武漢市中聯製薬廠)」。その製造技術は、生薬の本場中国の衛生局から数々の表彰をされており、製品は高い品質を持っています。
(近年、国薬集団中聯薬業有限公司に社名変更されました。)

どの工場で作ってるか?製造技術は?

医薬品は、服用して仮に何かあったとき、製品への責任が明確になるように「製造販売元」だけを記載し、責任所在があいまいになりやすい「発売元」、「販売元」、「製造元」など複数の事業者名は原則として表記しないように指示が出されているようです。
逆に、日本メーカーが国外の工場に委託製造させた場合、「製造販売元」は日本メーカーのみの記載となるため、どこの工場で作ったのか分からない場合が多いのです。

「婦人宝」は小太郎漢方製薬の国内工場で製造されていますが、八ツ目製薬の「当帰養血精」は中国の工場で製造とされていますが詳細は分かりませんでした。
イスクラ産業の「婦宝当帰膠」は、中国の阿帰養血糖漿と同じ「武漢中聯薬業集団股份有限公司」で製造されており、パッケージにはこの文字が刻印されています。
(マニアックすぎますが、一種のブランドマークのような感じです。)

 現在は「国薬集団中聯薬業有限公司」と刻印されていますが、これは武漢中聯薬業集団股份有限公司の社名が変わったためです。

発売された順番と商品の歴史

  • 「商品の歴史はあまり関係ないんじゃないの?」
  • 「新しいほうが効きそう。」

と思いがちですが、これも重要なポイントです。

もともと中国の「阿帰養血糖漿」を日本の医薬品基準に合わせ、安全性をより高め作ったものが「婦宝当帰膠」です。
先発品である「婦宝当帰膠」は様々な研究がされてきました。
その結果、「婦宝当帰膠」をマネして作ったのが「当帰養血精」。
そして比較的最近できたのが「婦人宝」です。
まるで、ジェネリック医薬品のような流れですね。
一般的なジェネリック医薬品のように、成分が化学的に解明されている場合、効能効果に変化はありません。
しかし、漢方薬は天然の生薬から作られるため、数多くの成分を有しており、その全てが解明されているわけではありません。
そのため、完全に再現するということが非常に難しくなります。

難しい当帰の抽出

婦宝当帰膠、当帰養血精、婦人宝の主成分の「当帰(とうき)」。現代の研究で、この当帰には揮発性の成分が多いことが分かっています。揮発性の有効成分が多いため、長時間煎じるには向かない生薬です。抽出時にこのような成分にまで気を使っているかが、大きなポイントとなります。

料理に似ています。有名シェフが作った料理の材料だけ見ても、同じ料理は作れません。作る手順を知ることができても、料理人の腕も関係するのでなかなか同じようには作れないのと同じです。 試しに、婦宝当帰膠、当帰養血精、婦人宝を飲み比べてみると味が全く違うことに驚きます。

婦宝当帰膠、当帰養血精、婦人宝の効能・効果

日本で発売するにあたり、以下の効能・効果を取得しています。

更年期障害による下記疾患
頭痛・肩こり・貧血・腰痛・腹痛・めまい・のぼせ・耳鳴り・生理不順・生理痛・冷え症などを改善します。

しかし、漢方薬はまだまだ科学的に解明されていない部分も多く、様々な研究が行われています。 華中科学技術大学による「当帰」の動物実験の結果では、

華中科学技術大学による「当帰」の動物実験の結果

  1. 増血作用
  2. 女性ホルモン調節作用
  3. 卵巣機能改善・卵胞発育促進作用
  4. 子宮内膜改善作用
  5. 鎮痛作用
  6. 微小循環促進作用

などの働きがあることが確認されており、
当帰を高濃度で含む婦宝当帰膠・当帰養血精・婦人宝は、更年期障害以外にも貧血、冷え性、肩こり、頭痛、月経困難症、不妊症などでお使いになる方も多くいらっしゃいます。

また過去に同済医科大学で、「当帰」ではなく実際の製品「婦宝当帰膠」でラット、マウスを用いて薬理学的研究が行われたことがあります。

  • 造血作用
  • 免疫賦活作用
  • エネルギー代謝の活性

などが確認され、生理痛などの原因になる子宮収縮を抑制させる働きも挙げられています。
また、女性ホルモンに対する働きも調べられました。
結果は、黄体ホルモン(プロゲステロン)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体刺激ホルモン(LH)の水準を高め、ホルモンを調節する作用はあり、乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)には影響を与えないと報告されています。

(中医薬研究 VOL.2 より)

防腐剤

「防腐剤は体に悪いから、ダメ!」というつもりはありません。
賛否両論あると思いますが、添加物として微量しか含まれないため人体には影響がない範囲です。

先発品の「婦宝当帰膠」に防腐剤は含まれていません。
これは、糖濃度を高めて腐らないようにしているためです。
しかし、後発品の「当帰養血精」や「婦人宝」には含まれています。
この辺がどうにも腑に落ちないのです。
婦宝当帰膠と同じなら必要のない防腐剤を入れなくても良いのでは?と思います。
消費者向けには防腐剤は少ない、できれば入っていない方が良いと思います。
製造メーカーとしては、「マネしてみたが、結局防腐剤を入れざるをえなかった。」ということでは?と思えてなりません。

まとめ

婦宝当帰膠

【防腐剤】 なし

【研究データ】 あり

当帰養血精

【防腐剤】 あり

【研究データ】 なし

婦人宝

【防腐剤】 あり

【研究データ】 なし

国内で一番歴史の深い「婦宝当帰膠」は、研究データや口コミ・評判なども数多くあります。
漢方薬は、まだまだ科学的に解明されていない成分も多く、少しの製法の違いで効能効果が変わってしまうこともあります。そのため、長年培われてきた製造方法や経験を軽視できない場合が多いのです。
配合生薬が同じという理由だけで「当帰養血精」や「婦人宝」に転用はできません。

「当帰養血精」も「婦人宝」も良い処方です。
ただ、あくまで「婦宝当帰膠は婦宝当帰膠」、「当帰養血精は当帰養血精」、「婦人宝は婦人宝」です。
「婦宝当帰膠から当帰養血精に変えたら合わない」ということもあるでしょうし、「婦人宝は良かったのに婦宝当帰膠は合わない」といことも十分考えられますので、ご注意ください。

※実際に、湖北省武漢にある武漢中聯薬業集団股份有限公司の婦宝当帰膠の製造工場まで視察に行っってきましたが、日本の医薬品基準で製造しているだけあって想像以上に綺麗でした。
工場の内部まで見せていただけただけでなく、婦宝当帰膠の製造過程や当帰の抽出方についても包み隠さず説明していただけ、とてもクリーンな印象を持ちました。(さすがに工場内部の写真撮影はNGでしたが)

婦宝当帰膠の製造工場

婦宝当帰膠の製造工場

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