最近、顔の頬が赤く、のどが乾き、体の手足がほてっているご老人をよく見かけるようになりました。よく見ると顔全体が赤いのではなく、頬を中心にその周りだけが赤いのです。
これらはドライシンドローム『乾燥症候群』と言って、東洋医学では、気、血、水の中の『気』の不足によって起こる事が多いとされています。気は食べたり飲んだりしたものを材料にしても作られますが、年齢と共に体の機能が低下し、新陳代謝も落ちて、そのため『気』のパワーも不足してしまった結果です。口の中の舌の様子からも、その方の体の状態がある程度わかります。からだが加齢とともに乾燥すると、舌の色はふつうの人より紅く(深みのある赤)、舌の上に生える苔も少なくなり、ひびのような割れ目が出ることがあります。口やのどが乾きやすくなったり、汗が出やすくなったりする方もいます。
また、口の粘膜が乾くとのどが渇くので、いつもお茶やガムを含んでいたり、目の粘膜が乾き、目がぼやけたりしょぼしょぼしたり、皮膚が乾燥しカサカサになって体が痒くなり、寝ている間に思いっきり掻いてしまい傷つけて出血してしまうこともあります。汗が暑くもないのに、ひとりでに出てしまうのも健康的とはいえません。汗は本来暑い時、気化し体内の熱を逃がして体温調節するためのものです。ちょっと動いただけで、汗をかいてしまうのは、『気』の不足によって、しっかり汗腺の開閉をコントロールすることができなくなり、汗がひとりでに漏れてしまったという事です。さらに乾いた体の方が汗をかくと、ますます体は乾燥し、血液も濃くなってしまい血流も悪くなります。
そんな時、たくさんの水を飲めばいいかというと、問題はそう単純ではありません。
お休み前や、起きたあとの適量のぬるま湯を飲むことは、血栓予防という意味からもおすすめでが、体質を無視したくさんの水を飲みすぎると弊害も出てきます。乾いた大地に大量の水をまいても、水は、表面を流れるだけで土の中にまで浸透しません。まして加齢とともに弱ったからだの方や、胃腸の弱い人、喘息の人、心臓や腎臓の悪い人、冷え性の方が大量の水を取った場合、内臓に負担がかかり、むくみや痛み、その他の症状が悪化したり、元気がなくなったり、何度もトイレにかけ込むことになってしまいます。
血液がすみずみまで流れるには流れるための十分な血液の量が必要で、乾いた体に潤いを増すことはとても大切です。体液が不足してくると血も濃くなり、陽と陰のバランスも悪くなり、陰の不足から陽の力は大きくなって体の中にほてりが生じてきます。そのため様々な症状(口や目の乾きや顔の頬の赤くなる、皮膚の乾燥、便秘、手足のほてり)で悩まされたり、血液の流れが悪くなってしまいます。
東洋医学ではそのような時に、体質や症状にあわせ、乾燥を改善させる様々な漢方薬があります。それらを服用することによって、体液が増え、体のすみずみまで潤いが出てきて、乾きがとまり元気がでます。次回は、体質や症状にあわせた食べ物や漢方薬を紹介したいと思います。