皮膚トラブル

皮膚トラブルと言ってもその原因は様々です。虫刺されやや日焼けのように原因が外的な要因の場合は、ステロイド外用剤などで痒み・痛みを抑えたり、もしくはとくに治療をしなくても自然治癒することもありますが、慢性化してしまった皮膚トラブルはそうはいきません。
西洋医学でなかなか効果の得られない慢性疾患でも、漢方・中医学が効果を発揮する場合も少なくありません。
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、脂漏性湿疹、掌蹠膿庖症など、難治性の皮膚病でも改善するケースも多くあります。

漢方・中医学での皮膚病ケア

皮膚は内臓の鏡

漢方・中医学では皮膚と内臓は密接な関係を持つことから、“皮膚は内臓の鏡”と呼ばれています。ストレス、生活習慣、食生活など様々なことが絡み合い、臓腑に影響を与えてバランスが崩れると皮膚症状として現れると考えます。そのため、漢方薬選択する上で、その方の体質、置かれている環境などをじっくりお伺いし、漢方・中医学での皮膚トラブルの原因を特定し、それにあった処方を決めていきます。

漢方・中医学で考える、皮膚トラブルの原因

皮膚トラブルの原因は、炎症や痒みの原因となる風熱、湿熱、血熱、熱毒、痰湿、風寒、瘀血と、体内にこれらが生まれやすくなる体質、血虚、陰虚、肝鬱、肝腎不足、脾虚というものがあります。

炎症・痒みの原因

風熱(ふうねつ)赤い斑点、ミミズ腫れなど
湿熱(しつねつ)水泡やジュクジュクしたただれ、脂っぽいかさぶたやフケ
血熱(けつねつ)赤みの強い斑点や紅斑
熱毒(ねつどく)化膿、潰瘍
痰湿(たんしつ)イボや通常の皮膚に近い色のできもの
風寒(ふうかん)通常の皮膚色に近い蕁麻疹、赤みのないジュクジュクした症状
瘀血(おけつ)青あざ、しみ、紫色の斑点、しびれ、痛み

炎症や痒みが生まれやすい体質

血虚(けっきょ)皮膚のカサカサ、フケ、たるみなど、めまい、ふらつき、便秘などが起こりやすい
陰虚(いんきょ)ほてり、のぼせ、便秘、皮膚の乾燥、口の渇き、寝あせなどが起きやすい
肝鬱(かんうつ)ストレスなどが多い。イライラ、お腹の張り、寝つきが悪い、中途覚醒などが起きやすい
肝腎不足(かんじんふそく)足腰がだるい、しみ、皮膚の乾燥、耳鳴り、かすみ目などが起こりやすい。アレルギーの原因でもある免疫の機能の乱れとも関連します。
脾虚(ひきょ)消化器系の働きの低下や水分代謝が悪い。食欲不振、下痢、便秘、水泡、むくみやすいなど

これらの原因は、単独で現れることは少なく、いくつか複合することが多いので、漢方・中医学的にどこに分類されるか把握し、処方を選択していく必要があります。

漢方薬の選び方

炎症の強い急性期と比較的症状が落ち着いている時期の処方も違います。症状の強い時期はまず、原因となる物を取り除き、落ち着いている時期は体質を整えていくことが大切です。発生している湿疹の状態は同じでも、おひとりおひとりの体質や症状をみて、そのひとにあったオーダーメイドの漢方を選択し、体質を調整・改善していきます。

漢方薬は長期間服用しないと効果が得られないと思われがちですが、急性期の炎症が強い症状(強い赤み・痒み、ジュクジュクした湿疹)は、比較的短期間で効果が現れやすいです。そのため、急性期の場合は3〜7日程度で再来店していただき、症状が落ち着いたのを見届け、漢方薬を変更する場合もあります。

慢性化してしまった皮膚病は、症状が悪化する急性期と、皮膚症状が比較的落ち着いた寛解期を繰り返します。生活習慣に気をつけ、漢方薬を服用することで次第に寛解している時期が長くなり、気づいたら悪化することがなくなったということが多いようです。

ステロイド外用剤や保湿剤の使い方

ステロイド剤は使いたくないという方も多く見られますが、間違った使い方をしたり、急にやめたりすると症状が悪化する場合もあります。漢方と併用しながら、その時の状態に合わせて適切に使用することで少しづつ減らしていくことが大切です。

また、皮膚トラブルが慢性化すると、皮膚表面の表皮や真皮の機能が乱れ、刺激物が皮膚に入りやすく影響が出やすい状態になります。そのため、保湿剤などを用いた皮膚のバリア機能を高めるスキンケアもとても大切です。その時の皮膚の状態に応じて使用する必要がありますので、適宜アドバイスさせていただいきます。